2009年4月7日

ミーカガン

ウチナーが誇る漁業技術の中でも、最も偉大で、かつ我々にも身近なものがこれだろう。イチマンのウミンチュ、玉城保太郎氏が5年の試行錯誤の後の1884年に世界で初めて発明した水中眼鏡の元祖-ミーカガン-だ。同じく島の偉大な漁業技術であるアギヤーにも欠かせない道具の一つである。

熱帯の海岸植物であるモンパノキ(wikipediaモンパノキにはミーカガンが紹介されている!)の幹を枠にして、眼の当る部分をくり抜き、空いた穴にガラスをはめ込み、同じく熱帯の海岸植物であるアダンの葉を蔓にしていたという。驚くほどの完成形。これが、水中眼鏡、いわゆるゴーグルの直系の先祖であるという話もあながち、と思ってしまう。ウチナーの澄んだ海も、この技術を生み出す背景にあったことは、これまたいい話。

20年くらい前までは、釣具屋さんはもちろん、小さな集落の共同売店でも普通に手に入った記憶があるが、今では実用としての生産-販売はされていないと聞く。イチマンの釣具屋さんでそう聞いて残念がっていたら、その数年後に街のわりと大きな釣具屋で売られていたのを見た。しかし、そこで「フィリピンからの輸入なんですよ」、お店の人が常連さんと話しているのを聞いてしまった。島では、年季の入ったミーカガンを掛けているウミンチュに会うことは、珍しいが無いことではない。しかし、実用として生産する人がいなくなってしまっては、もうこれは一般的な釣具の役目を終えてしまっているのかもしれない。実際、僕が小さな集落の共同売店で、ほぼ最後の実用ミーカガンを入手したのはおよそ7-8年前、それは街の大きな釣具屋さんの価格より安価(¥500)で、そのころからもう既にお土産物化が始まっていたんだと思う。そのころ遊びに来た友達は、まさにお土産としてミーカガンを買っていった。そのミーカガンは大切に保存されているだろうか、今や貴重な一品かもよ。

そう、お土産化した「フィリピンからの輸入」物は、価格が以前の倍以上(¥1,200-1,300)だった。ガク、いや、この技術が海を渡り東南アジアへ伝り、世界の技術となっているんだということを象徴する話で、大変喜ばしいのかも。

ナショナルジオグラフィックに紹介された、アンダマン海の驚異的な身体能力を持つあの海の民、彼らが身についているのは!

果たして。

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